デイケア/池義和

毎日とまでは言えませんが、朝20分程瞑想を始めました。呼吸をする際に空気が鼻を通って肺に向かう感覚や、胸部や腹部が膨らんだり縮んだりする感覚に意識を集中する呼吸法と呼ばれる方法を実践しています。始めた頃は外気が喉に冷たく感じられましたが、近頃は冷たくはなく風が涼しく心地よい季節となりました。

 今取り組んでいる瞑想は仏教の修行の禅ではなく、禅から宗教的な要素を取り除いたマインドフルネスという認知行動療法の一つです。うつ病等の治療的効果があるとされる他仕事の能力を高める目的でグーグルやアップルといったアメリカの大企業が社員研修に取り入れる等21世紀に入って世界的に広まりつつあります。

 以前は本で見知っていた程度でしたが、幸い県内でセッションが開催されるようになって参加しつつ自分でも体験を重ねているところです。

 複雑化している社会の中で、過去のことに囚われたり将来のことを不安に思ったりしがちです。マインドフルネスでは今ここにいる自分を感じるモードに留まる練習をします。それによって心の動きを把握し、不安や緊張といった感情により良く対処し、創造的な能力を高められるようになることを目指します。

 実際に瞑想を始めると、呼吸に集中しているはずなのに過去や未来への様々な思いが沸き上がってきます。未熟なのでつい浮かんできた事柄につられ考えてしまいます。ただ、それに気づけば呼吸への集中に戻し、そうした自分を見つめ受け入れるようにしています。

 これまでの体験では、静かに自分の感覚と付き合って今の自分を受け入れること、そして、そうした中で生起してくる思いをも受け入れることが良いようです。

 マインドフルネスの瞑想はリラックスをするものではなく集中の状態を保つ努力をするものです。脳内では、同時に活動しているシステムは繋がりやすい性質があります。不安や緊張の元となる偏桃体につながる思考と穏やかな集中状態を作り出す脳内の活動が結びつくことが、緊張や不安の軽減に役立つように思われます。注意の切り替えをする力がつけば脳の活動を少し変えられるのかもしれません。

 静かに楽に呼吸ができると感じる時一つの自動思考が浮かんできます。酸素は他の原子と結びつきやすい性質があります。27億年前にシアノバクテリアが生まれて二酸化炭素を取り入れて大気中に酸素を放出し始めたということです。その後植物の中に取り込まれ葉緑体となってからもずっと酸素を作り続けています。その活動が続いているから穏やかに呼吸をすることができる有難さです。さえずる小鳥と酸素を分かち合っている、朝の一呼吸に他の生命との共生を想うこの頃です。


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