ラフル/武田智宏

 44歳になった今、趣味と呼べるものがほとんどない。あるとすればヘタな絵を描く事か音楽を聴く事くらいか…そうか、音楽を聴く事は趣味と呼べるものなのか。じゃあ誰も分からないような音楽の思い出話でもしようかな。

 10代〜20代の頃はバンドでドラムを叩いていた。ジャンルは? と聞かれればハードコアとかパンクとか答えているけどそこで会話が終了する場合も多々。もともと陰キャでひねくれていた高校1年生は、いわゆるJ-POPと呼ばれるジャンルには見向きもせず、帯屋町の怪しいビルの地下にあったK-CLUBに入り浸っては、国内外のパンクのCDやレコードを買い漁っていた。同時期に幼馴染とバンドを結成し、そこからドラマー人生が始まるわけだがドラム教室に通うなんてダサい事はできないと思っていたケツの青い高1は一から独学。ということもあって基本的なリズムは多分今でも全然できていない。ライブではシンバルで手を切って流血しながら演奏を続けたり(武勇伝?)、演奏中ステージからダイブして後頭部を強打し前後の記憶が飛んだり(not武勇伝)した事はほろ苦い思い出。当時は高知のバンドシーンも最盛期で、血気盛んなパンクスがひしめきあっていた(はず)。高知から世界に名を轟かせるDISCLOSEもいたし。上町にあったおんぼろライブハウス「SOUND BOX」のギグ(GIG!!)に一人で行くのは少しおっかなく、半ば無理やり友達を引き連れて足を運び、そこでも県外からツアーで来る色んなバンドに影響を受けていった。

 高卒後に3年間過ごした大阪はパンクスの聖地でもあり、人生の中で最もかけがえのないキラキラした(ドロドロした)思い出の詰まった場所。天王寺のこれまたおんぼろライブハウスで観たWARHEADというバンドのボーカルは、ビール片手に暴れる客のビールがかかり、それにブチ切れてベースで客をぶん殴って開始5分位でライブが終了してたし、CORRUPTEDという激重バンドのライブは低音が凄すぎてライブハウスの低い天井が落ちてくるんじゃないかとビビりながら観てた。観るもの聴くものどれもが衝撃的かつ刺激的だった。また音そのものだけでなく、バンドの持つメッセージや姿勢(アニマルライツ等)にも影響され、肉食を一時期やめていた事もあった。

 好きなバンドは? と聞かれると、国内海外問わず数えきれないほど。そんななかでも日本の“LIP CREAM” というバンドは今でも世界一かっこいいハードコアパンクバンドだと思っている。好きなドラマーは? と聞かれるとCORRUPTEDの長谷川チュウさんにずっと影響を受けていると答えるけど、44歳になった今でも聞かれた事はない。

 そんな感じで今でも大好きなパンクだけど、歳を重ねるにつれ変なこだわりもなくなり、今ではジャズもロックもHIPHOPもJ-POPもK-POPも聴くようになった。ただ演歌だけはまだ先のようだ。読んでくれてありがとうございます。


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