作業療法センター/正木孝一

常日ごろより、我が子たちには「字をきれいに書きなさい」「お父さんはいつもキレイな字を書きよった」「勉強も毎日のようにしよった」などと、父親としていかにもな小言を言っております。

そんなある日の休日のこと、父親である私の威厳を揺るがす出来事がありました。祖母宅(私の実家)へ遊びに行き、帰宅した子供たちがニヤニヤと私の顔を見て言いました。「お父さんの小さい頃の日記見たで?」と、そして手土産のように10冊程、私の小学生時代の宿題日記を持ち帰っているではないですか。

なんたる不覚。我が母の粋な計らいのせいで、キレイな字とは程遠く、誤字・脱字にまみれた日記を我が子に読まれるはめになったのです。「うわっ、字きたな。なんか変な落書きがあるやん」と子供たち。立つ瀬が無い私は「まあ字はキレイじゃないけど、内容はおもしろいろ」と自分で自分をフォローし苦笑い。


あまり読み込まれると、後々の父親の面目に関わるので「今日は早う寝なさい」と、何とか子供たちを日記から、いなします。そして、ようやく子供たちが寝静まった後、一人こっそりと日記を読み返してみました。鉛筆で書いた筆圧の強い汚い字を見ていると、当時のわんぱくな頃の記憶がよみがえってきます。そして、大人になり影をひそめてしまった子供ながらの旺盛な好奇心や童心が懐かしまれます。読みながらふと思うと、時代は違えど子供の考えや行動、ましてや我が子なら似たような部分が多くあるように感じました。我が子たちに、いかにもな小言も良いが、もっと子供の目線で寛容に! と古い日記の私に教えられたような気がしました。

せっかくなので、ここで小学3年生の頃に書いた、ある日の宿題日記をひとつご紹介します。

 『せつぶん』
今日はせつぶん、まめがくえると思い、
お母さんにまめかってきたときくと「か
ってきてない」と言った。ぼくは「まめ
くわんが」ときくと、「きょ年のがのこっ
ちゅう」とお母さんがいった。ぼくが「そ
んなもんくったら腹こわすやん」という
と、お母さんが「だいじょうぶ」といった。
それから夜まめくった。味はかわらなか
ったけど腹はだいじょうぶかな。

大人になって読むと、なんとお恥ずかしい親子の会話を日記にしていたものか。読んでコメントをくれた当時の先生の心中を察すると笑えてきます。こんな風に古い日記を読み返していると、1年前の節分の豆もさることながら、30年前の古い日記を、これまで大切に保管していてくれた母親に感謝の気持ちでいっぱいにもなりました。

どうぞ皆さんも機会があれば幼き日の古い日記を探してみてください。ほっこりと温かい気持ちになれるかもしれません。そしてお子さんがいらっしゃる方は是非とも孫の代まで大切に保管し、受け継いであげて欲しいと思いました。


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